PAST EVENTS
未来の風景をつくる 学生コンペ 結果発表
テーマ「令和に向けた街の豊かさを企画せよ!」
ー目次
ー受賞作品
「流動する通り庭」
石田卓也/横浜国立大学大学院 都市イノベーション学府
藤田一摩/同上
菅野成一/東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻
「マチガハウス 工業化住宅街の脱却と未来風景の創造」
桑原 崚/愛知工業大学 工学部 建築学科
大竹 浩夢/同上
服部 秀生/同上
加古 百華/同上
「非常 日常」
丹羽雅人/名城大学大学院 理工学研究科建築学専攻
加藤駿一/名城大学 理工学部建築学科
福井俊介/同上
玉田朱乃/同上
「REMOTEWORKER HOUSING」
加藤大稀/ 名城大学大学院 理工学研究科建築学専攻
澤田留名/名城大学 理工学部建築学科
坂口雄亮/同上
長谷川将規/同上
岩村樹里/同上
「別視点シティ」
小澤一樹/名城大学大学院 理工学研究科建築学専攻
新井崚太/名城大学 理工学部建築学科
市瀬智之/同上
長谷川真央/同上
当初予定しておりました賞に加え、主催者が選出した作品になります。
「タネのある土地」
安間理子/北海道大学工学院 建築都市空間デザイン専攻
坪内健/同上
「交歓する車景」
佐藤 睦/首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 建築学域
荘司 知宏/同上
平野 誠弥/同上
審査委員長
原田真宏氏
(建築家 /マウントフジアーキテクツスタジオ主宰、芝浦工業大学教授 )
最優秀賞となった提案は土地という天然の「地盤」に加えて、建築的「地盤」を用意して、居住コア領域は分譲地とし、それ以外の家族形態や就労形態によって変動する諸室領域は借地とするというものです。分譲と賃貸の中間を狙った提案であり、変化が加速する生活様式への応答性にリアリティがあります。また“土地“という不動産事業の言語でデザインを整理できた点も、現在から未来への接続性の点で高く評価しました。
次点となった提案は、「いわゆる不動産広告」をパロディ化したようなシート表現の中に、「母屋+離れ」という新しい住居単位が提案されていた点が光っていました。従来は「一住戸」として厳密に固定されていた住宅の境界を、近い位置関係にある二棟にしたことで、空間的にも時間的にも流動化させています。アメーバのように領域を広げたり狭めたりしながら、この住宅地に住まい、あるいは働き続ける一族の様子が想像されます。これも時間軸に沿った居住形式の変化を許容する提案であり、新しい時代への処方箋であったように思います。
「これからの新しい宅地開発の手法」、問いを解くだけでなく、問いを問い、そして問いを立てることの意義を示したくれたコンペだったように思います。
審査員
林厚見氏
(不動産プロデューサー /SPEAC共同代表 、東京R不動産ディレクター)
本コンペでは、街区の作り方、”コミュニティ”、事業としての現実性、社会的意義、宅地開発の未来など、考えるべきテーマが多層的・多面的であり、特に学生にとっては難題だったと思うが、多くの力作が寄せられた。
多くの案で「関係性」がテーマとなっていた。敷地や建物同士の関係、人と不動産の所有関係、人と人との関係などについて、それらを柔らかく流動的にしていくことが豊かさや長期的な合理性を生むはずだと本能的に感じているようだった。コミュニティとは何なのか。仲良し?アイデンティティ?セーフティネット?・・その問いに対して立体的・統合的に考え答えようとする姿勢を重視して評価した。また今回の敷地では鉄塔というネガティブな要素の存在にきちんと対峙して解決を提示しようとしている案は評価した。
個人的には「防災と自治」の提案が印象的だった。交流空間や柔らかな境界といった物理的な仕掛けが良好な関わりを生む”はず”、というハードへの過信や、防災は”機能”としてきちんと組み込んでおこうという安易さは持たず、防災を堂々と中心におきながら、それをある種DIY的な遊び場のような自由な日常空間あるいは心理的な拠り所として設定している。自律的な自治の成立へ向けた戦略という意味も含め、統合的かつ実効性のあるアプローチに思えた。
実際の事業においては、コンペで提示された切り口やアイディアを前向きに取り入れながら、現実的な挑戦が行われることを望んでいる。
田中元子氏
(建築コミュニケーター/グランドレベル代表)
分譲住宅しかも実施の可能性ありと挑戦的かつ実験的なコンペだけあり、主催者や審査員側も、その評価軸や具体性について議論、模索し続けたし、またその態度は挑戦する学生側も同様だったと思う。最優秀作品に選ばれた「流動する通り庭」は、そのような状況の中でもバランスがとれていて、作者がいかにこの掴み難いテーマや分譲住宅という対象を多角的に検証しながら、また「こうなって欲しい」というような願望やメッセージ性だけでなく、冷静に社会性やリアリティを意識しながら、コツコツ積み上げるように設計していったのだと思う。個人的には、素材や解像度といった直感的な感覚を織り込んだ「別視点シティ」にも惹かれた。潔く属人性を示したことも評価したいが、だからこそファシリテーターとなり得る人物、その他は一般人、といった荒い分類には惜しさを感じた。コミュニティを意識した建築作品や都市計画は得てして、青写真通りのコミュニティ醸成がされ難かった。学生の皆さんが人間ひとりひとりの多様性のみならず、ひとりの人間に内在する多様性からも学び刺激され、結果皆さんの手によって、わたしたちがまだ見ぬ「生き方」が拓かれていくことを予感させられた。
藤村龍至氏
(建築家/東京藝術大学准教授、RFA 主宰)
郊外住宅地の新しいあり方に関して意欲的な提案が並びました。最優秀案には土地の分譲を前提としないかのような、大きな敷地に大きなひとつながりの建築物が建つ、グループホームのような提案が選ばれました。土地や住宅の所有に関して慎重な現代の若者の感覚が全面に出ており、10年後に住宅市場が大きく変化する予兆のようなも のを感じました。
我が国の郊外住宅地には1970年代以後の約50年間、緑豊かなコモンスペースやフッ トパス、タウンハウス形式やプラスワン住宅と呼ばれる住み開きの試みなど都市計 画・まちづくりや建築計画の専門家が新しいまちを作ろうと奮闘してきた歴史があり ます。並んだ提案にはそれらの試みを現代の視点から再評価しているように感じられ る提案がいくつかみられました。
団塊ジュニア世代が住宅購入するピークが2000年代の後半にありましたが、それを過 ぎると市場の縮小が本格化し、住宅が売れなくなってきます。すると消費者の嗜好が 全面に出て、保守化する傾向が強まります。保守的すぎる街はやがて活力を失い、ゴ ーストタウン化することも郊外住宅地の歴史が示しています。歴史に学び、現代なら ではの試みをするによってこそ、私たちは未来の風景をみることができることができ るでしょう。
牧野隆広氏
(起業支援家/名古屋大学 客員教授、ミライプロジェクト代表)
審査員の中で唯一、不動産も建築も本業ではありませんが、長年のIT業界での経験と企業経営経験を活かして、この4年間に4棟の賃貸マンションを企画して新築し、ミライプロジェクトの収益ビジネスとして運営しています。そのため、今回の審査では経営者としての視点から皆さんの案を見ました。
テーマとなった敷地は最寄駅から徒歩30分あり、大きな鉄塔が立っています。人口減少が進むことを考えると条件はよくありません。一方で、名古屋市内の住宅地に1万平米を超える土地はとても希少で、自動運転車の時代になれば最寄駅からの距離も問題にならない気がします。このような特徴および、所有からシェアになっていく時代背景を活かした案を期待し、具体的には以下のようなポイントを意識して選びました。
①広大な敷地と鉄塔の存在をうまく活かしているか
②自動運転車の未来社会を予感させる案になっているか
③人口減少が進んでも新たな住民、若い世代が集まってくる工夫があるか
④実現可能性、持続可能性を感じさせる、ビジネスとして魅力的な案になっているか
皆さん、うまくまとめられていましたが、学生ならではの超絶にぶっ飛んだ案がなかったのはちょっと残念でしたね。
ー表彰式
未来デザイン賞、優秀賞、入賞の受賞者については、10/5の表彰式にて賞金・賞状の授与を行います。当日は審査員の牧野隆弘様のオープンラボも開催予定です。
詳細はコチラ。
主催:中電不動産株式会社
協力:株式会社デンソー
企画委員会:生田京子(名城大学教授)、𣘺本雅好(椙山女学園大学准教授)、米澤隆(大同大学専任講師)
企画・運営:未来デザインラボ(株式会社ラ・カーサ、1/ 千、SUVACO 株式会社)