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オープンラボ:愛知における街づくりの提言

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起業支援家であり、名古屋大学客員教授でもある牧野隆広さん。マイクロソフトやエイチームといったIT業界をはじめ、賃貸マンションの企画設計や、ご自身が運営する介護事業など幅広く活動されています。今回は“経営”や“運営”といった切り口で、愛知の街づくりのあるべき姿を学びます。

ーGuest Speaker 牧野隆広(まきのたかひろ)氏
名古屋大学客員教授 株式会社ミライプロジェクト代表
電通国際情報サービスやマイクロソフトで中部圏の大企業の営業担当として活躍。創業期のインスパイアで投資ファンドの運営と経営コンサルティングを経験し、2002年に独立。2005年には経営コンサルタントとして関わったエイチームの取締役に就任。管理部門を管掌してエイチームの東証一部に上場、上場後にミライプロジェクトを設立。一方で2009年から名古屋大学の招へい教員を務め、2017年からは客員教授として講義を行う。

 


 

1.サラリーマン・経営者・大学教員の経験値を生かす
建築や不動産とは全く無縁だったという牧野さん。名古屋大学教育学部教育学科を卒業後、就職したのは(株)電通国際情報サービスでした。就職活動を通して、これからはITの時代がやってくると感じての業界選択だったと言います。そこでの法人営業で成績を上げ、トヨタ自動車担当になると、スカウト会社から声がかかるようになりマイクロソフト(株)へ転職。そのままトヨタ自動車担当として経験を積みながら、2000年に当時のマイクロソフトの社長が新たに創業したインスパイアに入社、投資ファンドの運営や経営コンサルティングを行うようになり、そこで初めて企業経営に関わることになりました。

 

コンサルタントとして様々な社長と仕事をするうちに、「社長は特別な人がなるものでなく、自分でも社長になれるんじゃないか」と感じて起業。名古屋名物の手羽先を直訳した「(株)ウィングトップ」を設立したものの、全財産を失うほどの大失敗を経験。どん底から徐々に回復した頃に出会ったのがエイチームでした。今でこそIT企業として大成功を納めていますが、当時はまだまだ零細企業。ケータイのコンテンツ事業の伸び方に興奮し、関わっていくことになります。管理部門を管掌してエイチームの東証一部上場を経験、上場後には再び自身の会社となる(株)ミライプロジェクトを立ち上げ、2014年から活動を開始しました。サラリーマンとして約10年、経営者として約17年、大学教員として約10年のキャリアを持つ牧野さんならではの視点で、ビジネスや街づくりに対する独自の理論が展開されていきました。

 

 

2.理想を実現できるミライプロジェクトの仕組み
2014年に営業をスタートしたミライプロジェクトは、3つの事業を展開しています。一つめは「介護・看護事業」で、デイサービスや訪問看護を運営。新瑞エリアに工夫を凝らした理想の介護施設をつくり、理想の介護・看護事業を展開しています。二つめは「ベンチャー支援事業」。昔のエイチームのような地元企業のスタートアップ支援を行っています。これらはどちらも利益よりも地元貢献に重きを置いて活動しているのだそうです。一方で、三つめの「不動産投資・有価証券投資事業」では利益を追求することで、3つの事業のバランスを取るようにしているのだといいます。自分の理想を追求した2つのビジネスを継続させるためにも、全社として黒字化できる3つ目の手堅いビジネスが必要になるのだということ。

 

 

3つ目のビジネスに当たる賃貸マンション経営では、中古マンションを4棟購入してすでに2棟を売却。その後、自社企画の新築マンションを4棟建てています。人が建てた中古物件よりも、自分が建てた新築物件の方が魅力的になり、競争力が維持できると判断したからです。それも資金調達では銀行にフルローンを組んでもらい、全額融資を受けて建設した後に、家賃から返済していくという異例の手段。これも、長年に渡って財務を担当してきた牧野さんと銀行との信頼関係がベースにあったからですが、自分のキャリアや強みを最大限に生かして戦略を立てることの大切さを教えてくれました。また、競争力を維持できる自社企画のマンションでは、次のことを心がけていると言います。

<自社企画のマンションでの決め事>
・長期保有できる物件になること
・景気変動に強い物件になること
・自分が住みたい、愛着を感じる物件になること

 

オフィスビルや高級マンションは景気変動の影響を受けやすいことから、単身者向けの1K/ワンルームマンションを企画。そこに、自身の単身生活での経験を反映させ、従来の仕様や設備を工夫しながら、他にない間取りやデザインで勝負しているといいます。例えば、名古屋の単身者向け賃貸マンションでは見掛けない間取りとして、バルコニーに面した浴室を設定したとか。自らの経験から、そこにニーズがあると判断したのだといいます。また、立地は駅から近く、ターミナル駅にも出やすいこと、そしてある程度都心部であることも重要だと言います。当然ながら家賃は高めになってしまうけれど、他にはない付加価値をデータに基づいて正確に見積もった上で家賃を設定すれば、満室が続く物件になるのだそうです。

 

 

ミライプロジェクトで展開する3つの事業、「介護・看護事業」「ベンチャー支援事業」「不動産・投資事業」は全て異なる性質を持っていますが、牧野さんのキャリアと経験と正確な市場データに基づく戦略によって、3つのビジネスがバランスよく保たれています。

 

<ミライプロジェクトで心がけているビジネスのまとめ>
・理想を実現したいなら、お金が必要
・黒字化できることが説明できれば、資金調達はできる
・全社として黒字運営できるようにすることを重視する
・儲かるビジネスが1つ確立できれば、その横で自分の理想を優先したビジネスも実現できる
・人のやっていないアプローチや、常識を疑うアプローチを意識してチャレンジする

 

 

3.愛知・名古屋の街づくりに期待すること
自動運転の時代はそこまで来ています。そうなった時に、どんな社会になっているでしょう。

・バスやタクシーが自動運転により24時間安価に利用できるようになれば、駅からの距離や終電の時間を気にしなくなり、郊外の価値が上がっていく。
・自動運転車の中で美容院やエステ、スポーツジムといった個人向けサービスが提供されるようになれば、通勤時間や移動時間を利用して何かをするということが当たり前になる。
・自動運転車がビジネスホテルのような宿泊機能を持つようになれば、一晩かけて宿泊しながら移動するビジネスシーンが生まれる。
・自動運転車がスーパーのような販売機能を持てば、メニューをリクエストすればAIが必要な食材を車に積んで自宅前で販売してくれるようになる。
・駐車場に止めるよりも自動運転で流していた方がコストがかからないとなれば、駐車場の考え方も変わってくる。

 

電話が固定電話から携帯電話に代わったように、家も固定の場所から自動運転住宅に代わるかもしれません。そうなれば、オートキャンプ的な場所が増え、家の姿はどんな風になっていくでしょう。
・背の高い自動運転車と家がドッキングするデザインになる
・自動運転配達ロボット用の郵便ポストや宅配ボックスができる
・顔認識のオートロック玄関扉や防犯カメラが備わる
・ソーラーパネルで自家発電や蓄電ができる
・窓が夜だけディスプレイになって、窓越しのプライバシーが守られる。

 

そうした自動運転社会の到来に向けて、トヨタがある車の街・愛知のポテンシャルは計り知れないと牧野さんは言います。さらに、郊外の価値が見直される一方で、都心部の発展も不可欠だと。名古屋駅前エリアと名古屋城エリアでの魅力的な街づくりがポイントになっていく中で、自動運転用の再開発によって、自動運転がカギとなり、街が発展していってほしいと。そのためには、都心部での実証実験やパーソナルモビリティとの共同走行など、自動車運転社会を先導していく街として、あるべき姿を語ってくれました。

 

続いて、現在、牧野さんが名古屋の街に対して具体的に今考えていらっしゃることをいくつかお話いただきました。
名古屋大学の大幸キャンパスとナゴヤ球場を交換するともっと活性化するのでは?という仮説。名古屋ドーム横にある大幸キャンパスがナゴヤ球場になり、遊園地をつくる事ができれば、後楽園球場のように子供連れの家族が昼間遊びに来て、夜野球観戦を愉しむこともできます。また、一軍と二軍の練習場を隣同士にすることで、野球ファンの聖地のようなものを企画できるのではないかとのことでした。

 

 

更に、今回のコンペの場所で、牧野さんのアイデアを話してくださいました。それは、住宅ではなくレーシングーカーコースを作ってみてはというもの。車を楽しみたいという人は多いが、豊田市や三重県まで足を伸ばさなければなりません。それが、名古屋市緑区で実現できれば、名古屋中心部や三河エリアからのアクセスもしやすい利点があります。また、今の若い世代は車を単なる移動手段に考えている人が多いのですが、車好きの大人が子供たちに車の楽しさを伝える場所があってもいいのではないかと考えられたそうです。

 

最後に、「牧野さんは、普段どんなことを考えて仕事をしているのですか?」

そんな疑問に、次のように答えてくれました。
・名古屋でエイチームのように、今後もっと伸びていくだろう企業のスタートアップをしたい。
・愛知・名古屋が東京経済圏よりも魅力的なビジネスエリアになるようにしたい。
・全国や全世界から若者たちが集まってくる街にしたい。

これまでにいろんな巡り合わせの中で、抵抗なくチャレンジして来たという自身の経験から、「最初からフィルターをかけたり、ガードしたりせずに、いろんな可能性に目を向けていれば、やりたいことも見えてくる」と、学生たちにエールを送ってくれました。

 

 

ー考察
牧野さんのお話を振り返ってみると、大きく三つのポイントがありました。
●自分の感覚を大事にすること
●常識を疑い、思考し続けること
●実行するための戦略を練ること
自分の感覚を大事にするは、野崎さんのN=1のお話の中にもありましたが、「いいな!」、「ワクワクする!」という気持ちを大事にするというものです。ミライプロジェクトのマンションやデイサービス施設、街づくりの提案は全てにご自身のワクワクが入っていました。「いいな!」と思う気持ちは、プロジェクトを行ううえでモチベーションにもなりますが、助けてくれたり、賛同してくれたりする人もいる、いわゆるガソリンのようなモノだと思います。
二つ目は、常識を疑い、思考し続けること。ナゴヤ球場と名古屋大学の大幸キャンパスを入れ替えてみてはどうかという案や、今回のコンペ会場で、レーシングカーコースを作ってみるという案は、中々でてこない案なのではないでしょうか。ただ、それだけではだめで、「どんなデメリットがあって、この案でどんなメリットがでてくるのか?」を提案できないといけません。そのためには、客観的なデータや情報をみて考えたり、時には自分の提案を疑ってみたり、他の人の意見を聞いてみたりと、刺激を与えながら思考し続けることが大切と言えます。
最後に戦略ですが、ミライプロジェクトの介護・看護事業、ベンチャー支援事業といった理想の事業を継続維持させるために、不動産事業でバランスを取っているというものです。やりたいことを実現するためにどうすればいいのか?を具体的に考えてみること。「利益を生めないから。」、「資金がないから。」と単純にできない理由を考えると山のようにあるのですが、そうではなく「どうすればできるのか?」という思考に立ち考え続ける必要があるのだと思います。
今回の講義では、誰もが起業する事ができ、そのためにはどんなことを具体的にすればいいのかを教えていただきました。
実際、聴講していた学生さんの中で、将来起業したい!という感想が出てきましたし、私自身もプロジェクトを行ううえで、いろんな不安はありますが、何か勇気をいただいたように思います。

 

主催:中電不動産株式会社
協力:株式会社デンソー
企画・運営:未来デザインラボ(株式会社ラ・カーサ、1/ 千、SUVACO 株式会社)

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